君が生きたこの世界で
愛唯羽がアルバムを見ながら思い出に浸っていると少し控えめに部屋の扉がノックされた。

｢愛唯羽？｣

その扉の向こうから聞こえたのは朱里の声。

『なに？』

｢美香ちゃん、来たよ｣

城山美香‐ｼﾛﾔﾏ ﾐｶ‐、愛唯羽の親友で愛唯羽と陽太の初めての写真を撮った写真部だ。

愛唯羽はすぐに扉を開けた。
そこには、すでに朱里の姿はなく美香だけがいた。

『み、か』

美香の顔を見たら、また少し泣きそうになった。
それでも愛唯羽は涙を堪えた。

｢愛唯羽。｣

美香は愛唯羽の名を呼んで暖かく、包み込んだ。

｢桜庭くんのこと、聞いた。
実は私も突然すぎてまだ信じきれてないんだ。
愛唯羽、辛いよね。苦しいよね。｣

美香はぎゅっと愛唯羽を抱きしめた手からゆっくりと力を抜き、自分よりも少し小さい愛唯羽の背中をゆっくりと撫でた。

『…ふ、っく』

静かに泪を流す愛唯羽を美香はずっと抱きしめていた。
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