君が生きたこの世界で
陽太の葬儀は梅雨の時期だというのに眩しいくらいに太陽が輝いていて、まるで陽太が太陽になったみたいだった。

まるで、真夏日を思わせるような暑い日。
そんな日だった。

陽太のいるホールの中は冷房が聞いて涼しく、この暑さから陽太を守っているみたいだと愛唯羽は思いながら陽太の前に立ち尽くしていた。

「新村」

愛唯羽を呼んだのは制服に身を包み、色とりどりの花の置いてあるお盆をもった孝大だ。

「な?
事故死な割に綺麗だろ?」

『うん』

2人で陽太を見つめる。
こうしてみると本当に起き上がってきそうなほど陽太は陽太のまま。
見れば見るほど、信じられなくなる。

「そーいや、陽太が最後に持ってた花束。
なんの花か分かったか?」

『あ、うん。
陽太のお母さんに聞いたよ
サンザシ、だって』

「サンザシ?」

『バラ科の白い花なの』

「へぇ」と返事をした孝大も、淡々と話した愛唯羽も視線は陽太のまま。

「愛唯羽ちゃん、孝大くん」

愛唯羽と孝大が声のした方を振り返ると、そこには陽太の母、百合がいた。
愛唯羽と孝大はゆっくりと頭を下げる。

「来てくれてありがとうね
陽太の大切な2人が来てくれたら、きっと陽太も嬉しいと思うわ
そういえば孝大くん」

そのまま、百合と孝大が話し出したため愛唯羽はその場を後にした。
< 13 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop