君が生きたこの世界で
「陽太が、死んだ」

『え…?』

その日はまるでバケツをひっくり返したような雨が降っていた。



梅雨に入った6月17日、新村愛唯羽‐シンムラ アユハは青野孝大‐アオノ コウダイ‐に呼ばれ家から近いファミレスにいた。

『どういう、こと…?』

「事故だった。
夜の8:00頃に陽太が3丁目の交差点を渡ろうとした時に車が突っ込んで来たんだ。
飲酒運転だった。」

桜庭陽太‐サクラバ ヨウタ‐はクラスの人気者であり愛唯羽の恋人である。

『な、んで…』

「陽太は、花束を持ってたらしい。
なんの花かは聞いてない、ごめん。
陽太のスマホで最後にLINEしてたのが俺で、それで警察から俺に連絡きたんだ。
本当は警察から連絡来た時に新村に連絡しようと思ったんだけど、俺も混乱してて」

スラスラと話し続ける孝大に愛唯羽はついていけなくなった。
なぜ、孝大はそんなに当たり前みたいに話せるのか。
悲しみが愛唯羽を包む。
でも孝大の目が赤くて少し腫れていることからきっと彼も悲しいのだろう。辛いのだろう。
そのはずだ。
孝大は陽太と心友と呼べるほどの仲だったのだから。
陽太が死んで悲しくないはずが無い。
泣かないわけがない。

「葬儀は明後日、6月22日な
事故だけど、割りと陽太、綺麗なんだ
だから、今日か明日にでも会いに行ってやって
きっと、新村のこと待ってるから。」

孝大はそれだけを伝え、ファミレスを出た。
愛唯羽は未だに信じられないでいた。
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