君が生きたこの世界で
そう言って薄く笑う百合を横目に愛唯羽はずっと陽太を見ていた。

目の前にいる陽太は目を閉じているのに、愛唯羽が目を閉じれば陽太のえがおばかり浮かんでは消える。

ー「俺さ、新村のこと好きなんだよね」ー

ー「愛唯羽って名前、可愛いよね
けど、俺皆と同じは嫌だからあゆって呼ぶわ!」ー

ー「あゆ!」ー

大好きな陽太の大好きな声。
大好きな陽太の大好きな笑顔。

『…ッ』

愛唯羽の目から涙が零れた。
それは止まることを知らず、こぼれ続ける。

愛唯羽が泣いた時、優しくその涙を拭ってくれた陽太は、もういない。

『よう、たッ
なんで、なんでぇ、?』

零れる涙を拭うことをせず、愛唯羽は陽太の体に触れた。
暖かかったはずの体。
愛唯羽よりも大きくて、筋肉があって、誰よりも愛しかったその腕。
もう二度と愛唯羽を包むことはない。
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