君が生きたこの世界で
陽太の葬儀が明日と迫った6月21日。
愛唯羽は自身の部屋に閉じこもってずっと泣いていた。

陽太との思い出の写真を貼ってあるアルバムを何冊も棚から引っ張りだし、ベットに広げた。

明日、陽太とお別れ。

こうしてアルバムを見ていると、余計に信じられない反面少しずつ、受け入れている自分がいた。

『あ、これ』

そっと愛唯羽の指がなぞった写真。
それは2人が付き合って1番最初に撮った写真。

陽太と愛唯羽が付き合ったのは去年の文化祭、ベタではあるがいわゆる文化祭マジックというもの。
この写真は2人が文化祭マジックにかかった時、写真部が偶然撮っていたものだ。
人目につかない、だが人がいないわけではない。
そんな場所で告白をしたのは陽太。
写真部は見事、それの場を激写したのだ。

『ふふ、』

少し照れながら笑う陽太とそんな陽太につられて赤くなっている愛唯羽。
初々しさ満点で、幸せさも満点な写真。

愛唯羽はその写真を初めとし、たくさんの写真を指でなぞる。

体育祭の写真、初デートの写真、学校でこっそり撮った写真。
どの写真も2人は幸せそうに笑っている。
こんなこともあったなと、懐かしくなり愛唯羽はまた微笑んだ。
それと同時にもう二度と、見ることの出来ない陽太の笑顔をしっかりと目に焼き付けた。
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