再会は、健康診断で。
「高倉さん!」
ガバッと高倉さんに抱きついた俺に、高倉さんは深いため息をつく。
「なんでお前らはそうすぐ抱きつくんだ。喜ぶのはまだ早いだろう。やっとスタートラインに立ったところだからな」
たしかにそうなんだけど、俺にとっては大きすぎる一歩だ。
「午後から、めちゃくちゃがんばれそうです!」
張り切って腕を回す俺に、高倉さんがニッコリと笑う。
「そうだよな、がんばれるよな。検査から戻ってきた部品の研磨、頼むな。俺がやろうと思ってたんだけど……他にもやらなきゃいけないことあるから助かるわ」
高倉さんの笑顔のプレッシャーに俺の顔が引きつる。だけど口に出しちゃったから、やれないなんて言えないよな。
これを任されるってことは、信頼されているってことだしな。
うちの会社はほとんどの過程がオート化されているけど、最後の仕上げとこういう再研磨しなくちゃいけないものは手作業だ。
特にこういう再研磨は、どこが規格外になったのかを見極めて調整しなければならない。
その調整の仕方次第で規格に合うか、ダメなるか決まるから俺たち技術者の腕の見せどころだ。