再会は、健康診断で。

また来る、なんて言っていたけど、きっともう私と平根が会うことはない。


そう思いながらナースセンターに戻ると、先輩たちが私を笑顔で迎えてくれる。


「西ちゃん、お帰り。時間かかったね。初産婦さんだもんね。説明、大変だった?」


「いえ。患者さんが小・中学校の同級生の妹さんで。ちょっと昔話で盛り上がってしまいました」


別段盛り上がってはいないけど、嘘ではないよね。


私の言葉に納得したようにうなずいた先輩が、寂しげにため息をつく。


「西ちゃん、今日が最後なんて、まだ信じられないな。寂しくなるわ」


お世話になった先輩にそう言われて、私は苦笑いをする。


私はお礼奉公を終え、今日で七年間働いた土岡産婦人科病院を退職する。


元気な赤ちゃんの泣き声も、聞き慣れた赤ちゃんの心音の音とも今日でお別れだ。


だからもう、平根に会うことはない。二度と、ない。


このときは、本気でそう思っていた。



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