再会は、健康診断で。

指定されていま場所に行くと、先に着いていたらしい黒崎さんが私を見てニヤッと笑った。会社では見たことのない、意地悪そうな笑い方だ。


「逃げずに来たね。偉い、偉い。まあ、懸命な判断かな」


そう言った黒崎さんが、私に目で着いてこいと促して歩き出す。


それについて歩いていくと、黒崎さんが私を連れてきたのはお洒落なレストランでもなんでもなく、普通の居酒屋だった。


「黒崎さんて、こういうところに来るんですね」


個室に通されて、黒崎さんの向かいに座りながら店の中を見回す。本当に普通の居酒屋だ。キョロキョロしている私に、黒崎さんは皮肉めいた笑みを浮かべる。


「まあね。口説いても見込みのない女に金をかけるのもバカらしいし。ここ、料理が上手いから結構気に入ってるんだ。西川さん、お酒飲まないでしょ?」


黒崎さんの言葉に私はうなずく。飲めないわけじゃないけど強くないし、何より黒崎さんの前で酔うのは危険な気がする。


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