再会は、健康診断で。

「会社の、先輩。性格が悪い人で、本当に悪ふざけされただけなの」


『その人、かえに好意を抱いてた人でしょ。かえの理想の、年上の落ち着いた人なんだよね』


平根、黒崎さんのこと知っているんだ。高倉さんと結城さんが、旦那さんに話したのかな。


別にやましいことはないから口止めもしてなかったし、旦那さんたちと仲が良い平根がそれを知ってても不思議ではない。


たしかにそう思っていたけど、とんでもない人だったよ。それに理想の人だと思ってたときも、私の中には平根がいた。


『だから、ふたりで食事に行ってたんじゃないの? 俺とその人のこと、比べてた?』


暗い声の平根の言葉に、なんだか悲しくなってくる。


だけど、平根にこんな声を出させているのは私なんだ。私がハッキリしないから……平根の好意に甘えていたから、平根のことを傷つけてしまった。


「……振ったの」


少し息を吐いてから、私は正直に全部話すことを決めてそう口にする。


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