再会は、健康診断で。

それに比べて結城さんは。みんな、結城さんに戦々恐々しているな。あの人、こういうとき頼りになるけど、鬼だからな。


でも、マジか……。


せっかく長年の片想いの相手と恋人になれそうなのに、なんでだよ。泣きそうになりながら保護メガネとマスクをして仕上げをしてる場所に行くと、ベテランの成田さんが俺を笑顔で迎えてくれる。


「お疲れ、待ってたよ平根。いや、久々にきついわ」


「お疲れ様です。ですよね、きついっすよね」

たしかにきつい仕事だわ。俺の言葉に、成田さんは苦笑いを浮かべる。


「いや、結城補佐が荒れてるから。平根がいると当たりが違うからありがたいわ。平根が来た時のみんなの顔、救世主を見る目だったぞ」


成田さんにそう言われて、俺は苦笑いをしながら工具を手に持つ。ああ、あのすがるような視線はそういう意味だったのか。しかし救世主って、大袈裟な。


「補佐のお気に入りだもんな、平根。技術も若手じゃピカイチだし、期待されてんだよ」


「そうっすかね。ストレス解消のサンドバックですよ」


俺でストレス解消してるって、堂々と宣言してるしね。


「平根! 喋ってねーで、きりきり働け!」


目ざとい結城さんに遠くから怒鳴られて、俺は肩をすくめる。


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