再会は、健康診断で。

「へーい。ね、サンドバックでしょ」


「いやいや。ありがたいよ、本当に。しかし、結城補佐はすごいよな。高倉さんと結城補佐がいれば大丈夫っていう安心感があるわ。おっかないけどな」


たしかにな。性格はあれだけど、仕事は本当すごい。デスクワーク嫌いなだけあって、現場に来てるほうが生き生きしてるわ。


ていうか俺、超かわいそうじゃない?


長い片想いがやっと終わったのに、会えなくて結城さんのサンドバックとか、拷問なんですけど。


今日帰ったらかえに会えないってメールしなきゃ。


もうそれからの二週間は本当に地獄だった。働けるだけ働いて、家に帰って眠るだけって生活が続く。


それはみんなそうだったんだけど、俺には千紗ちゃんに会えなくて超絶機嫌の悪い結城さんのサンドバックという悲しすぎる役割もある。


平社員はみんな土日のどっちかを休んでいるのに、俺は休みなしだ。


結城さんの俺が千紗に会えてないのに、お前だけいい思いさせるかっていう心の声が聞こえるようだ。結城さんはまだ家に帰れば顔みれるじゃんと思っても、怖すぎて言えない。


しかも絶対給料出ないし。飯奢ってもらうくらいじゃわりに合わないんですけど。


「悪いな、平根。結城のわがままで」


土日は現場で俺たちと同じように汗だくで作業している桐生課長にそう謝られるけど、まあ仕事だから仕方ない。


< 174 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop