再会は、健康診断で。

「今日はかえの身体が心配だから、一日ゆっくりするつもりだけど……なんかしたいことある?」


俺の言葉に少しのあいだ、うーんと唸っていたかえは、なにかを思いついたようにパッと顔をあげた。


「じゃあ、甲子園に出てる航が見たい」


予想外だったかえの言葉に、俺は目を丸くする。地区大会の決勝から甲子園まで試合は録画してあるし、手元にもある。


あ、言っとくけどいつもそれを見て過去の栄光に浸ってるとかじゃないからね。誰でも体験できるわけではない、貴重な体験だったから思い出として手元に置いてあるだけだ。そんなものをかえが見たがるのが、ちょっと意外だった。


「いいけど、かえ……野球に興味あったっけ?」


「ううん、全然ない。ルールもわかんない」


だよな。なのに、なんでそんなもん見たがるんだろ。面白くないと思うけどな。不思議すぎて首を傾げる俺に、かえはにっこりと微笑んだ。




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