再会は、健康診断で。

よく言うじゃん。人間、死期が近くなると仏に近くなるって。こんな穏やかな顔の結城さん、初めて見たわ。


「そんな穏やかな顔して、結城さん死ぬんすか?」


つい、そう思ったことをペロッと口にしてしまった俺を、
結城さんはギロリと睨んでくる。


あ、やべ。口が滑った。


身の危険を感じて逃げようとしたけど、一歩遅かった。結城さんの手が、がっと握りつぶすように俺の頬を掴む。


「うぃひゃい」


「平根、お前な。これから千紗の出産も控えてるのに、縁起でもないこと言うんじゃねぇよ」


ギリギリと力を込められて、たまらずに結城さんの腕を叩くけど離してはくれない。


「しゅみゅにゃしぇんべした。にゃにゃみゃりゅかりゃひゃにゃひて」


「は? なに言ってんだか全然わかんねぇんだけど。お前、ふざけてんの?」
ふざけてねぇし。結城さんが顔掴んでるから喋れないんですけど。本当にドSだな、この人。


俺、誓ってMじゃないんですけど。いじめられたい願望とかないし。かえのことだって、攻められるより攻めたいし。


< 229 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop