再会は、健康診断で。
「あ、そうだ。挨拶が遅れましたが、俺、結城千紗の夫です。千紗がいつもお世話になってます。それで、平根がごめんね。小・中学校の同級生だったんだよね」
「こちらこそ、結城さんにはお世話になってます」
やっぱり結城さんの旦那さんだったその人に、私は挨拶を返しながらうなずく。
「妹さんが出産した先の病院で再会したんでしょ? あいつすごい喜んでたんだけど、次に行ったら辞めちゃってたってめちゃくちゃ落ち込んでたんだよね。天国から地獄ってああいうことを言うんだろうね」
気味が悪いくらい静かだった、と笑った結城さんの旦那さんが、首を傾げて私を見る。
「で、かえちゃんがそんなに泣いちゃうほど、あいつはなにをしでかしちゃったの?」
結城さんの旦那さんの質問に、私は素直に答えていいものかと悩みつつも、さっきの出来事を口にする。
言葉にすることで、このぐちゃぐちゃな感情と息苦しさから解放されたかったのかもしれない。
「抱きしめられて、いきなり……キス、されて」
まだ涙目の私に、結城さんの旦那さんは一瞬目を見開いてからため息をつく。
「あいつ、本当にバカだな。やってること犯罪じゃねぇか。ほんと、俺が謝るのもなんだけどごめんね。平根、ひとつのことに夢中になるとまわりが見えなくなるところがあるんだよね」
誰に謝られても、こんなところでファーストキスを奪われた事実は消えないもん。