all Reset 【完全版】
「何が?」
「行ったことねぇじゃん?」
亜希の通っていたネイルサロン。
話はよく聞いていた。
店の雰囲気が気に入ってて落ち着くとか、指名してる人がセンスいいだとか。
亜希はよく話していた。
大学に入ってから月一ペースくらいで亜希の爪は変わっていた。
春はパステルカラー。
夏になれば涼しげなブルー系にし、秋になればハロウィンのアートが入ったデザインにしていた。
それが終われば、クリスマスっぽい赤を基調とした指先になっていた記憶がある。
季節やイベントごとに変わり、亜希の指先はいつも賑やかなかんじだった。
そういうとこに気を遣うのは女だなって思ってたし、いいなって好感を持っていた。
高校に入った頃から亜希はどんどん女っぽくなったと思う。
「何でお前が緊張すんだよ」
秀は鼻で笑ってそんなことを言う。
「わっかんねぇけど、何となく」
男には無縁のその領域に、多少の緊張は当たり前だった。
言い出しっぺだった俺が亜希の代わりに予約の電話もしたけど、そのときですら無駄に緊張した。