all Reset 【完全版】
暗い部屋の中、間接照明のぼやけた光だけが灯る。
亜希を送って良平と別れてから、俺は真っすぐ部屋に帰った。
帰ってから、一時間は経っているのかもしれない。
特に何をするわけでもなく何本か煙草を吸った。
開けた窓からは、いつからか霧のような雨が舞い込んでいた。
『電話したけど、出ないみたいだから留守電入れました。今日は、忙しかったのかな? 仕事が早く終わったから、ご飯でも一緒にって思ったんだけど……残念だな。また、電話するね』
聞き終えると、そのまま伝言を削除した。
スマホを置いた代わりに煙草に手を伸ばす。
何気なく灰皿を見ると、三本の吸い殻が転がっていた。
煙が窓の外に流れていくのを見ながら、留守電の女の顔を思い出してみる。
『頭数揃えないとだからさ、とりあえず来てくんねぇか?』
同じ授業を取ってる中島。
例の、亜希のことを訊いてきた同期だ。
奴に言われ、何となく行った合コンで知り合ったOL。
女性誌の有名ファッションモデルの系統とかで、それを“〇〇系OL”とか言うらしい。
中島が言っていた。
丸ノ内の企業で受付け嬢をしている“〇〇系OL”風の女は、柔らかい雰囲気をした華奢な女だった。
大人しそうで、いかにもお嬢様風。
でも、その見た目とはギャップがある積極的で軽い女。
そんな印象を受けた。
もちろん、何の興味も湧かなかった。