all Reset 【完全版】



『ごめんなさいね、突然電話して』


「いえ、大丈夫です」



大丈夫と言いつつ、おばさんと話すのはやっぱり緊張する。



緊張と言うより、やっぱり後ろめたさの方が強いのかもしれない。



『亜希がね、秀くんと良平くんに会いたいって言っててね。良平くんは、都合が悪いみたいで。秀くんも予定あるかしら?』



今日はバイトもなかった。


一日家にこもってDVD鑑賞でもしていよう、そう思っていた。


これといった予定は無い。



「いえ、予定は特に……」


『じゃあ、よかったら遊びに来て? 亜希も喜ぶから』


亜希が電話の向こうで騒いでいるのが聞こえる。


窓に目を向けると、ブラインドの向こうは強い日差しを予想させるほど明るかった。


寝起きの目には痛いほどの光。


猛烈な暑さを予感させる。



「わかりました。後で、お邪魔しに行きます」



どうしようかと思いつつ、俺はおばさんにそう言っていた。


せっかくの誘いを断るのも気が引ける。



それに何より、亜希に会いたかった。



『よかった。じゃあ、気を付けて来てね。急がなくていいから』



おばさんはそう言って通話を終わらせた。


最後の最後まで亜希が横で騒いでる声が聞こえていた。


電話が終わって独りに戻ると、一時忘れていた暑さを急に感じ始める。



起きよう……。



落ちた煙草をくわえ直し、シャワーを浴びようと立ち上がった。


< 110 / 419 >

この作品をシェア

pagetop