all Reset 【完全版】
『ごめんなさいね、突然電話して』
「いえ、大丈夫です」
大丈夫と言いつつ、おばさんと話すのはやっぱり緊張する。
緊張と言うより、やっぱり後ろめたさの方が強いのかもしれない。
『亜希がね、秀くんと良平くんに会いたいって言っててね。良平くんは、都合が悪いみたいで。秀くんも予定あるかしら?』
今日はバイトもなかった。
一日家にこもってDVD鑑賞でもしていよう、そう思っていた。
これといった予定は無い。
「いえ、予定は特に……」
『じゃあ、よかったら遊びに来て? 亜希も喜ぶから』
亜希が電話の向こうで騒いでいるのが聞こえる。
窓に目を向けると、ブラインドの向こうは強い日差しを予想させるほど明るかった。
寝起きの目には痛いほどの光。
猛烈な暑さを予感させる。
「わかりました。後で、お邪魔しに行きます」
どうしようかと思いつつ、俺はおばさんにそう言っていた。
せっかくの誘いを断るのも気が引ける。
それに何より、亜希に会いたかった。
『よかった。じゃあ、気を付けて来てね。急がなくていいから』
おばさんはそう言って通話を終わらせた。
最後の最後まで亜希が横で騒いでる声が聞こえていた。
電話が終わって独りに戻ると、一時忘れていた暑さを急に感じ始める。
起きよう……。
落ちた煙草をくわえ直し、シャワーを浴びようと立ち上がった。