all Reset 【完全版】
亜希を待たせる場所は、在学生しか入れない本館にしようと決めていた。
本館はいつも空いている。
分厚くて難しい、誰が見るんだって本がたくさん並び、学生がたむろできる雰囲気は全くない。
たくさんの書物は手に取ってもらおうと待っているのに、そこで本を選ぶ人間を俺はほとんど見た記憶がなかった。
学生証を提示して中に入ると、本館内の自習スペースに向かった。
閑散とした空間には数人の学生しか見当たらない。
数百人が座れる自習スペースにも、ぽつりぽつりとしか学生がいなかった。
一番奥の席に行くと亜希はバッグを机に置き、音を立てないように静かに椅子を引いた。
「絶対ここにいろよ? 勝手にどっか行くなよ?」
良平は真剣な面持ちで亜希に言い聞かせる。
それに対し、亜希は微笑んでうんうんと頷いた。
その様子を見て、俺はなぜか不安を感じ始めていた。
やっぱり、独りにするなんて無謀な気がする。
「なぁ、やっぱ俺……」
「……あ? 何だよ」
「いや、授業出ないで、亜希といた方がいいかと思って……」