all Reset 【完全版】
「は? マジかよ。だったら俺が残るし」
思い立ったようにそんな提案をすると、良平は張り合うようにそう言い返してきた。
そう言い出すとは思ってたけど……。
「お前は出た方がいいだろ? 留年すんぞ」
「はぁ? 大丈夫だし。亜希みたいなこと言うなよ」
「俺は出なくても余裕な講義なんだよ」
「俺だって平気だし」
「大丈夫……だよ?」
俺らの言い合いを見ていてか、亜希は申し訳なさそうに口を挟んできた。
「待ってられるから、ケンカしないでよ……?」
逆に不安にさせたようだ。
俺と良平は顔を見合わせ、お互い口をつぐむ。
「亜希はね、待ってる間にやることがあるんだ~」
そう言って、亜希はバックの中からノートとピンクやオレンジの色ペンを何本か取り出した。
取り出したそのノートは、俺とやってる“交換日記”だった。
「何? やることって?」
「良平くんには秘密」
「何だよ秘密って」
「秘密は教えちゃいけないのー、内緒なの!」
机に両肘をつき両手で顔を包んだ亜希は、良平を見上げて意地悪く笑ってみせた。
良平は一気に不服そうな顔になる。
「ほら、行くぞ」
やり取りに息詰まった雰囲気を察して、俺は良平に一声掛けた。
去り際、「すぐ戻るから」と亜希に言ってみたけど、ふわりといつもの笑顔を浮かべた亜希を見て、俺はなぜか胸騒ぎを感じていた。