all Reset 【完全版】
「あの、ここに座ってた亜希……あっ、女なんですけど、どこ行ったか知りません?」
訊いてみると、眼鏡の男は本から分厚いレンズの視線を俺に向け、
「……さぁ?」
と、まるで亜希がそこにいたことすら知らなかったように答えた。
何っだ、コイツ……。
「さぁ?」じゃねぇんだよ、この眼鏡っ!
そう心の中で叫んだ俺は、その場から一瞬にして駆け出していた。
ここには……いない。
誰かに声でも掛けられてたらどうする?
まずいことになる。
そう思った俺は、焦って図書館から飛び出していった。