all Reset 【完全版】
サークル……。
亜希が入ってたとは前に聞いてた。
……代表?
俺の頭の中で話が繋がっていく。
『サークルの先輩と、付き合ってたっていう話ですよ?』
前に尋乃から聞かされた言葉がリアルにフラッシュバックしてくる。
まさか……。
掛け下りる階段の踊り場で、派手なデザインで描かれたチラシを目にして立ち止まる。
それには、
『Feeling event』
という文字と、
『SHIBUYA act』
と書かれていた。
ケツポケットからスマホを取り出す。
一回、二回……。
三回目のコールで電話は通じた。
「もしもし?! 秀っ?」
『……? 何、どうかした?』
もう一限授業を受ける予定の秀は、亜希ともう会ってるはずの俺の電話に戸惑ってるような声を出した。
「スダって奴、知ってるか?」
そう訊くと、電話の向こうは黙ったまま静かになった。
周りの話し声だけがザワザワ聞こえる。
秀の答えを聞くまでのほんの数秒が、妙に長い時間に感じられた。
『……亜希が、付き合ってた男だろ?』
やっぱり……。
俺の中で抜けてたパズルが全てはめ込まれる。
『おい、なんかあったわけ?』
「……なぁ、図書館にさ、亜希の荷物が置きっぱなんだ。講義終わったら取りに行ってくれ。後で連絡する」
『は? おい、お前、今どこにいるん』
プチ。
秀の声が聞こえてるまま、俺は一方的に通話を切っていた。