all Reset 【完全版】
息苦しい空間から地上に脱出すると、空は黒く日は完全に落ちていた。
渋谷駅から離れた裏路地は賑やかさもなく、ちらほら人影がある程度。
外に出てからも、俺は何も言わず亜希の手を引いて歩き続けた。
繋いでいる亜希の手がカタカタ小さく震えている。
我慢できなくなって振り向くと、亜希の心細そうな目と俺の視線がぶつかった。
その瞬間、亜希の目から大粒の涙が流れ始めた。
俺は進める足を止めて振り返る。
怖かったと思う。
あんな場所に連れて行かれて、どうしたらいいのかわからなかったんだと思う。
そう思うと、俺は何て言葉を掛けたらいいのかわからなくなっていた。
「良平くん……大丈夫?」
それは……
俺が言うことじゃん……。
怖くて不安な思いをしたのは亜希自身なのに、何でそんなことを言うんだよ?
「何もされなかったか?! 大丈夫か?」
亜希の両手を取って、俺は抑えていた心配を露わにしていた。
亜希は数回頷き、ぽろぽろと涙を流す。
「何で勝手にどっか行くんだよ?!」
少し叱るような言い方をしつつ、あの男が上手いこと言ったとも頭の中ではちゃんとわかっていた。
でも、咄嗟にそんな言葉しか出てこない。
「……ごめんなさい」
亜希は肩を竦め、目を下向いて謝った。