all Reset 【完全版】
「これは、いくつくらいかな? たぶん……四歳か五歳くらいだろうな。あ、これは小学校のとき。亜希、髪短かったんだよな」
小学生のとき、亜希の髪型はショートカットだった。
それも、ボブとかじゃない、かなり短いベリーショート。
いきなり長かった髪を切ったから、
「何で切ったの?」
って訊くと、
「良ちゃんと同じにしたかったから」
と亜希は言った。
その意味のわからない発言は、今も俺には印象深い。
いつも一緒にいた亜希は、男のようにやんちゃな子どもだった。
そのせいで、クラスの奴らにいじめられたこともあった。
『おとこ、おとこ!』
なんてよく言われていた。
それから中学に入学して、亜希の髪はどんどん長くなっていった。
思い出となっていたことは、アルバムの写真で鮮明に蘇る。
でも、亜希にはそれも目新しいことなんだろう。
そう思うと何だか寂しくなった。
「……良平くんと亜希は、いつも一緒にいたんだね?」
やっと喋った亜希は、写真を見ながら記憶を辿るようにそう言った。
「だな。それが普通だったんだよ」
こんな昔の写真なんて、亜希がこうならなければ見なかったかもしれない。
当たり前に歩んできた過去は当たり前すぎて、俺は振り返ることもしなかったんだと思う。
一枚一枚写真に目を移していると、ふと視線を感じた。
反射的に顔を上げると、なぜか亜希に見つめられていた。