all Reset 【完全版】
亜希の口から告げられたその言葉に、俺は否定なんてできなかった。
記憶を失う前、亜希は秀が好きだった。
亜希の記憶を蘇らせたい。
今までそう思ってやってきた。
忘れたことを教える。
思い出してほしい。
でも……。
秀を、好きだった……
それだけは本当のことを言えなかった。
言いたくなかったのかもしれない。
亜希の今の気持ちを俺には否定することなんてできない。
「でも……亜希にもよくわからないから……」
亜希は恥じらいを消すように精一杯笑ってみせた。
それが無性に可愛くて、俺は亜希の髪を優しく撫でていた。
ゆるく巻かれた柔らかい髪の感触は、いつまでも俺の手の中に残った。