all Reset 【完全版】
そんなことを考えながら、早一時間……。
店から出ると、空はオレンジ色がかった淡い光を放ち、街をその色に染めようとしていた。
歩くスピードも気遣わないで、明治通りを渋谷方面に向かってひたすら歩く。
右後ろから尋乃がついて歩いてくるのを確認しながら、俺は言うタイミングだけを窺っていた。
何て、切り出すか……。
ストレートに、
別れたい。
それが一番いい。
けど、すんなり話がまとまらない可能性も有り得る。
何で? とか言われたら、どうするか……。
何で?
……理由、か。
それは、何て説明すればいいのか……。
別れることに理由をつけるのは面倒臭い。
ただ、別れたい。
それだけのこと。
余計なことを言って、わざわざ傷付ける必要もない。
あー……。
やっぱ気が重いんだよな、別れ話……。
言う方もいい気分じゃないけど、言われる方の身を考えると辛くなる。
でも、そこまで考えたらきりが無い。
何か俺って……
やっぱ最悪。
いや……待てよ?
案外あっさり納得してくれるかもしれないし……。
いや、その可能性は低いか……。
って、かなり自意識過剰じゃね?!
「先輩っ!」
そんなことをうだうだ考えてると、急に引っ張られるようにして手首を掴まれた。
振り返ると、尋乃は真剣な眼差しをしてじっと俺の顔を見上げていた。