all Reset 【完全版】
「話、聞いてます? さっきからうわの空じゃないですかー……」
考えを巡らせていただけあって、尋乃の不意打ち突っ込みに迫力を感じてしまった。
「あ、ごめん……」
心にも無く謝る俺。
「今日、先輩変ですよ?」
真剣な顔を不服な顔に変え、尋乃は不満げに俺を追いつめる。
その不機嫌な言い方に、タイミングは今かもしれないと直感した。
いつも通りに“ニコニコ”なんてされたら、言い出したいものも言い出せなくなりそうだった。
「あのさ……」
「あっ、でもそんな日もありますよね? 冗談ですよ、冗談」
でも、尋乃は俺の心境を感じ取ったように作り笑いを見せた。
こっちが言いかけた言葉を遮って、いつも通りニコニコ微笑む。
まるで……
今から何を言われるのかわかってるみたいに……。
それを精一杯流そうとしてるみたいだった。
「あのさ……話があるんだ」
でも、俺は心を鬼にして続きを切り出した。
俺の顔を見上げる尋乃の作り笑いはみるみるうちに消え去り、不安な色へと変化していく。
それでも浮かべた笑みを必死に保とうとする尋乃を見て、俺の心の鬼は怯んでしまいそうになった。
「何、ですか? やだなぁ……」
不安そうな笑み……。
でも……
ここで何でもないなんて言えば何も変わらない。
「……別れてほしいんだ」