all Reset 【完全版】
そう言った途端、尋乃の表情は一気に曇った。
「え……?」
「もう……尋乃とは付き合えない」
やっと言えたその一言は、俺にとっても重く、決して心地いいもんじゃなかった。
「えっ、どうしてですか?! ビックリしちゃうんですけど!」
平然を装うように尋乃は笑う。
でも、表情は誤魔化しきれていない。
笑顔と泣き顔が入り混じり、くしゃくしゃと歪んでいく。
見たこともない泣き顔が、たやすく想像できる顔になった。
そんな姿に心が痛む。
「ごめん……ありがとな」
そう言うと、掴まれていた手はすっと放された。
やっと言えた。
今まで言えなかった、その一言。
形の無い何かから解放された瞬間。
でも、俺の心はちっとも晴れなかった。
あれだけ別れたいと思ってたのに矛盾してる。
少しでも一緒の時間を共有した人間と関係を断ち切ることは、やっぱり苦手なのかもしれない。
これが……
“情”ってやつなのか?
「どうしてですか?!」
振り返らないで一歩足を踏み出したとき、尋乃の引き止めるような声が足を止めさせた。