all Reset 【完全版】
大学を出、そのまま真っすぐ家に帰った。
生活感の薄い空間。
部屋には使うものしか置いてない。
机に、ベッド。テレビ、コンポ、、パソコン、冷蔵庫。
最低これだけあれば生活に困らない。
大学に入ってすぐ、俺は実家を出て独り暮らしを始めた。
実家から通えない距離ではないけど、どうしても実家を出て生活をしてみたいとずっと思っていた。
独り暮らしをすることに、母親は少し反対した。
食生活が乱れるとか、そんなことを散々口にしていた。
でも逆に、父親は自立するだろうって簡単に賛成した。
今の生活には満足している。
全てのことを自分でやる羽目になったけど、これと言ってそこまで苦じゃなかった。
何より、誰の邪魔も入らず独りで考えたいことはいくらでも考えられる。
それが一番ありがたかった。
帰ってすぐ煙草の火をつける。
ひんやり冷たいフローリングに座って、のぼっていく白い煙の筋をぼんやり眺めてみた。
『背、伸びなくなるよ?』
煙草に火をつけるたび、亜希はよくそう言った。
ぷっと頬を膨らませて、怒ってるとは思えない可愛い顔で俺を毎度叱った。
でも、背も満足するくらいに伸びていたし、俺的に特に何の問題もなかった。
煙草には高校二年のとき初めて手を出した。
興味というか、経験と思っただけのこと。
気が付けば、何かを考えるときには火をつける習慣ができ上がっていた。
のぼっていく煙をぼんやりと見つめながら、さっき良平たちと話した亜希のサークルのことを思い出した。
亜希は辞めると言ってたサークルをまだ辞めれないでいる。
『気まずくて……行きづらいんだよね』
亜希はあの話の後、俺にそう言った。