all Reset 【完全版】
翼とアクアマリン
夕方、四時過ぎ。
この時間になると、どこからともなく人が集まってくる。
制服姿の高校生。
私服姿の若者。
ちらほらスーツのサラリーマンなんかも見当たる。
代々木公園を背にして、亜希と俺はこれといった目的もなく表参道を歩いていた。
もうすぐラフォーレが目印の交差点に差し掛かる。
「良平くん、どこに遊びに行ったのかな?」
両手をぷらぷらと振りながら亜希は言う。
左手に持つバッグが、前と後ろへ行ったり来たりを繰り返す。
「どこだろうな?」
ってわけで、俺も良平が今日何してるかを知らない。
「お友達と遊びに行くって言ってたよ?」
と、亜希は言う。
俺を誘ったように良平にも電話をかけたらしいけど、良平は今日一緒じゃない。
亜希はさっきから、良平の行方ばかり気にしている。
「じゃあ、誰かとどっか行ったんだな?」
「ふ~ん、そっかぁ……」
ぷらぷらしてた手をもっと大きく振りながら、亜希は物足りなさそうにそう言った。
交差点に近付くと、四方八方からから集まってきた人で歩道はごった返していた。
どっち方面を見ても、信号待ちする人の頭だらけ。
数え切れない頭を見ていると、さっき通りすがりに見た竹下通りを思い出した。
通りいっぱいに頭がひしめき合っていて、アスファルトの地面が少しも見えなかった。
頭の上を歩いてけそう。
そんなくだらないことを思った。
「……?」
突然服を引っ張られた気がして目を向けると、亜希がシャツの裾を握り締めていた。