all Reset 【完全版】
最近の亜希は、人ごみに行くと急に不安そうな顔をする。
自分の顔を隠すみたいに俯き、大人しくなる。
少し前まで周りに興味を示してきょろきょろしてたのに、それが今は無いに等しい。
須田のことがあってからだ。
そのときのことを俺は亜希に訊いてない。
というより、 話題にも出してない。
訊いたって、嫌なことを思い出すだけ。
きっと、あの出来事は亜希にとってトラウマになっている。
そう思うと、訊くなんてできなかった。
良平みたいにその場にいれば、優しい言葉の一つや二つ、当たり前に掛けれたと思う。
でも、それももう過ぎたこと。
今になって思い出させて慰めるくらいなら、俺は早くそんな出来事を忘れさせる努力をしたい。
そう思ってる。
亜希に掴まれたまま、俺たちは真っすぐ横断歩道を渡った。
規則的な間隔で植えられた街路樹は、冬を迎えるために一枚ずつ葉を落としている。
空から舞い降りてくる無数の枯れ葉を、俺は歩きながら目で追っていた。