all Reset 【完全版】
顔を上げて俺を呼ぶと、亜希はまたガラスの中に視線を落とした。
「いろんな色があるよー」
亜希の興味を引いたのは、カラフルな楕円形の石に羽のモチーフがされたピアスだった。
“Birthstone”
と、横に小さな字でさりげなく書いてある。
誕生石ってやつだった。
「きれいな色がいっぱい……」
「誕生石だって」
「たんじょう、せき?」
疑問を投げかけるような目が俺に向けられる。
「生まれた月で決まってる石があるんだよ」
「……じゃあ、お誕生日でってこと?」
「まぁ、そういうことかな?」
「へぇ~、そうなんだぁ! きれいだねぇ……」
かなり気に入ったのか、亜希はまじまじとショーケースの中を見つめ直していた。
「……アクアマリン」
「え?」
「亜希の誕生石。三月生まれは、アクアマリンだって」
「へぇー! どれどれ?」
「これ、みたい」
アクアマリン……。
白い砂浜に、透き通った海。
どこまで行っても足の先が見えるような、澄んだ海水。
その石はそんな透明に近い水色だった。