all Reset 【完全版】
あの話……。
それは、寒さが増してきた去年の十二月上旬のことだった。
「どうしたらいい?」
亜希は俺にそう訊いた。
大学に入ってすぐ、亜希はサークルに入った。
俺から見れば実態がよくわからないサークルだった。
健全な運動系サークルや文化系サークルと違って、大学特有の“交流サークル”っていう部類のやつだった。
活動はサークルでの飲みが主ってやつ。
それについて俺は特に口出ししなかった。
亜希が入りたいなら入ればいいし、止める理由もなかった。
そこに入ってすぐ、亜希はある男と付き合いだした。
たしか、『須田』とかいう男だったと思う。
俺らより一級上の三回生で、たまに大学内でも見かけた。
やたら目立つ奴だった。
少し長髪のウルフカットで、ミーハーな軽そうな男。
俺にはそう見えた。
生息地帯は渋谷。
そんな身なりだった。
亜希との付き合いは、奴の方から迫ったと聞いた。
それには納得した。
亜希がその手のタイプに自分からいくとは絶対に思えなかったからだ。
亜希は奴に付き合おうと言われて、断れなかったと俺に話した。
入ったばかりのサークルで気まずい思いをしたくない。
それが理由だった。