all Reset 【完全版】
「ちょっと待てって! 今行くっつーの!」
体育館の中から誰かに呼ばれたその人は、わたしにもう一回「ごめんな」と言って、ボールを片手に中へ戻って行った。
それが、良平先輩との出逢いだった。
それから、わたしの毎日は良平先輩のことを考えたり、目で追うことに費やされるようになった。
初めは、たぶんバスケ部の人ってことと、“リョウヘイ”って名前だってことしか知らなかった。
そのうち友達からの情報で、二年の先輩だってことを知ったりした。
たまに学校内で良平先輩を見掛けると、わたしの心臓は自分でもビックリするくらい飛び跳ねた。
姿を目にした一日は、凄く幸せな気持ちでいっぱいになれた。
それがささやかな幸せで、癖になっていった。
それから友達に付いて来てもらって、用もない二年生の教室の前を通ってみたりもした。
少しでも良平先輩を見たかった。
今になって思えば、可愛いことをしてたなんて思う。