all Reset 【完全版】
忘れていいこと
「お母さん、お買い物行っちゃったんだ。帰って来るまで待っててって言ってたよ」
家に行くと、亜希はそんなことを言いながら俺を中に通した。
おばさんは出掛けてるらしい。
俺を入れると、亜希はしっかりと玄関の鍵を閉めた。
「お邪魔しまーす」
家の中はしんとしてた。
テレビの音とか、なんも音が無い。
「お母さん帰って来てから行こうね!」
亜希はそう言いながら、ご丁寧にも俺にスリッパなんか出してくれた。
いつも靴下でべたべた上がってるけどね。
今日は亜希が行きたいって言い出して、小学校を見に行くことになってたりする。
亜希と俺が通ってた小学校。
あの頃は歩いて三十分(足も遅けりゃ、寄り道もするわけで)はかかってたけど、今なら十五分も歩けば行ける近さな気がする。
「出掛けたばっかなの?」
「うん。良平くんが来る少し前だよ」
亜希はさっさと階段を登りながら振り返る。
「ふ~ん、そっか」
留守番なわけか……。
なんて思いながら亜希の後をついてった。