all Reset 【完全版】
髪も短くてスカートなんか履かなかった亜希は、見た目は男の子。
でも、根はやっぱり女の子だった。
すぐに泣くし、弱かった。
幼いながら、俺は亜希を否定する奴らが許せなかった。
ムカついたし、代わりに喧嘩をしたことだって何度もあった。
今考えれば、俺はあんな昔から亜希が好きだったのかもしれない。
ここに来て記憶が呼び戻された亜希は、少し悲しそうな表情で一点を見つめていた。
少し……後悔した。
亜希のそんな顔を見て、俺は単純にそう思った。
記憶って……一体何だ?
思い出したくないことは、忘れた方が楽。
忘れてもいいこと。
そんなの誰だってある。
「いいよ……そんなこと、思い出さなくて」
何かの衝動に駆られて、俺は背後から腕を回して亜希の耳元にそう言っていた。
忘れてもいいこと……。
俺の頭に、秀の顔が浮かんだ。