all Reset 【完全版】



「何の思い付きなわけ? 留学とか」



投げた矢を抜きに行く秀に問いかける。


俺にそう訊かれた秀は、目も合わさず鼻でフンと笑った。



「思い付き? 失礼な奴だな。思い付きじゃねぇし」


「だって、そんなこと一言も聞いたことないからさ」


「別に話すことじゃないだろ? 行きたいとは前から思ってたし」


軽く突き放すように言われた。


いつものことだけど、何か今日はトゲがある気がする。


「……じゃあ、留学宣言だったわけ? 今日の呼び出しは」


「まぁ、それもあるな。あとは、それのため」


顎でこっちを指され、俺はテーブルの上を改めて見た。



亜希と秀がやってたという交換日記。


内心、ショックを受けた。

というより、嫉妬心なのかもしれない。


亜希の何気ない思い付きだったとは思うけど、それはそれで受けるショックがあった。



秘密ってなんだよ、

秘密って……。


なんて思った。



これだけのことで疎外感を感じるなんて、俺はやっぱりガキだ。



「忙しいったって、これくらいやってやれよ?」


「お前がいんじゃん」



秀はさらっと言って、またダーツの矢を投げた。


その矢は、中心部から数センチずれたとこに見事刺さっていた。



「それだけ。じゃ、俺戻るから」



秀はかなりあっさりと俺の前から姿を消していった。



意味不明な奴……。



置き去りにされたノートを見て、小さな溜め息が漏れた。





このときの俺は、

まだ秀の気持ちに気付いてなかった。



もちろん、

おかしくなってる俺らの関係にも…



気付いてなかった……。


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