all Reset 【完全版】
似た者同士
行き交う学生の騒がしい声を背中に受けながら、俺はぼやけた目で文字を追っている。
留学の記事が載る掲示板を見ていた。
もうどこでもいい。
行ければ、贅沢は言わない。
「私も留学しようかなぁ?」
そんな声がして真横を見ると、黒のアンサンブルニットに白の膝丈スカート。
いつの間にか横に立っていたのは、例の彼女だった。
良平の、“元”カノ。
偶然か必然か、最近よく顔を合わす気がする。
「前田先輩、もう帰りますか?」
「え? あぁ、帰るけど」
「じゃあ、一緒していいですか? 話あるんです」
そう言った彼女は、相変わらず愛想笑いを浮かべて歩いていった。
……話?
そう思いながら、俺は彼女の後に付いていった。
正門まで続く長い道を、奇妙な沈黙のまま歩いていく。
何十本と門まで続くソメイヨシノの木はほとんど丸裸で、まだねばって落ちてこない乾いた葉がちらほら残る程度だった。
その上には、白く濁った空が広がっている。
黒い物体が飛んできたと思ったら、『カァカァ~』と呑気な鳴き声を響かせて視界から消えていった。
「……前田先輩、元気、無いですね?」
突然発された言葉に反射的に彼女を見ると、思いっきり作り笑いで俺の顔を見ていた。
元気無いのは君でしょ……。
そう思える笑みだった。