all Reset 【完全版】
「どうしたの? お出掛け?」
立ち上がった俺に、亜希は目線を合わせるように上向いて微笑む。
「あぁ、今からバイトなんだ」
何でこんなとこに独りで亜希が?
その疑問ばかり頭の中を旋回する。
「そうなんだぁ、日記に書いてあったもんね? 大変だね」
何の躊躇いもなく話す亜希を見てると調子が狂わされる。
自分だけこんな複雑な気持ちになってるのかと思うと、俺は今すぐこの場を離れたくなった。
でも、目の前にいる亜希から目が離せなくもなっていた。
「……亜希は? 何してんの?」
やっぱり気になって訊く。
すると、亜希は急に不安そうな表情を見せた。
「うん……良平くんとね、待ち合わせしてるんだけど……来ないの」
「来ない? 何で?」
「わからない……電話もしたんだよ? でもね、出ないの……」
亜希はここで良平と待ち合わせをしてるらしい。
でも、良平が現れる気配はいまだにない。
「……五時半から待ってるんだよ」
「えっ、五時半? ……もう一時間以上経ってるじゃん」
俺がそう言うと、亜希は心細そうに俯いた。
「アイツ……何やってんだよ」