all Reset 【完全版】
人差し指を伸ばして何かを言うたび、首の辺りで内巻きになってる髪が小さく揺れる。
指先は知らないデザインのネイルアートに変わっていた。
細かいラインストーンが散りばめられ、薄いピンクのように見える。
バイトの交代は、最近入ってきた一個年下の短大生に頼んだ。
急に頼みの電話をしたけど、早く仕事を覚えたいと快く代わってくれた。
突然バイトを休みたいなんて、今まで一度も言ったことはなかった。
普段勤務態度が真面目な方だけあって、電話に出た店長は少し驚いていた。
逆に心配されたくらいだ。
まさか嘘をついて休もうとしてるなんて思いもしてない様子で、簡単に騙されてくれた。
ほとんど無意識にそんな電話を入れ、気が付けば勝手に亜希を連れて来てしまった。
でも、亜希は横で楽しそうに東京の街を眺めている。
良平にはメールを入れておいた。
電話が通じないなら、メールを入れておくしか手段がなかった。
ここに来るまで何度考えてみても、あの良平が亜希を放っておく理由が思い浮かばなかった。
信じられない。
よっぽど何かがあったとしか考えられない。
でも、それにしたって許せない。
俺が強くこう思うのは、身を引こうとしてたからかもしれない。
「ねぇ秀くん? あれっ、あれ何?」
亜希が指差す先には、オモチャのように小さいレインボーブリッジが見えている。
「……あの光ってるやつ?」
「そう! あの丸いの」
丸い……の?