all Reset 【完全版】
「……あ、そっちか。あれは、お台場の観覧車だな」
「観覧車? 大きいの?」
「まぁ……大きいかな? それなりに」
答えながら、去年のことを思い出していた。
ちょうど、十二月に入ったばかりだったと思う。
亜希が須田と別れたいと打ち明けてきたとき、俺たち二人はあの場所にいた。
周りには気が早いイルミネーションが飾られ、カップルたちが寄り添って歩いてたのを憶えている。
なかなか渋って話さない亜希に、俺は痺れも切らさず黙って話が始まるのを待っていた。
思えば、須田と付き合ってたころの亜希には、俺は今のような複雑な気持ちにはならなかった。
それは、俺にとって須田は眼中に無い人物だったからだと思う。
“土俵が違う”
そんな感じだ。
自分が他の女を相手にするくらいの感覚。
そんなレベルだと思っていた。
でも、良平は違う。
奴は、
同じ土俵にいる。
下手すれば、自分が亜希を想う気持ちに負けてない気がする。
そんな良平だからこそ、今のような気持ちに俺はなっている。
良平が憎いわけじゃない。
アイツは、今でも俺にとって人生に必要な存在だと思ってる。
だから、こんなよくわかない気持ちを抱える自分に腹も立つ。
どこにぶつけたらいいのかわからない感情を秘めて、自分の中に留めるしか、今の俺にはできないでいる。
「何で良平くんに渡しちゃったの?」