all Reset 【完全版】
「え?」
遠くを眺めていた亜希は、いつの間にか俺の顔を覗き込んでいた。
「交換日記だよ。秘密だって言ったのに……秘密じゃなくなっちゃった」
突然そんな話になって、俺は頭を切り替える。
「あ、ごめんな? 渡しに行けなかったからさ」
「えぇー、どうして? ねぇねぇどうしてー?」
こっちの気持ちを全く察してない亜希は、駄々っ子ばりに追求して俺を睨んでくる。
頬を膨らませた顔が可愛くて、俺は片手でぷにっと膨れた頬をしぼませた。
「あ~あぁ……」
誤魔化すように笑ってみたけど、亜希はそれでもがっかりしたように肩を落とした。
「良平だからいいじゃん?」
「だめっ、駄目だったの。亜希と秀くんだけの秘密にしたかったの!」
亜希の駄々っ子ぶりは止まらない。
そんな亜希の様子に自然と笑みがこぼれた。
少し……嬉しかった。
亜希は特に何も思ってないだろうけど、良平を差し置いてやってた交換日記にそこまでこだわってくれたこと。
それが、微々たる救いに感じられた。
「……良平とは、どう? 仲良くやってる?」
「良平くん? うん、仲良しだよ。この前ね、小学校に連れて行ってくれた」
「小学校? 亜希たちが行ってた?」
「うん、そうだよ。亜希ね、忘れちゃってること、思い出したんだよ」
亜希が自分で何かを思い出したなんて言い出し、俺の動きは一瞬止まってしまう。
「……思い、出した?」
「うん。小学校のときのこと。でもね、良平くんは思い出さなくてもいいって言ってた」
その言葉に「どうして?」と訊き返しそうになった。
でも、
考えればわかることだった。