all Reset 【完全版】
「何? どんな大層な理由で亜希待たせてたわけ? 一応聞いといてやるよ」
理由が有るのはわかりきってる。
でも、俺は敢えてきつい口調で良平を問い詰めた。
『……待ち合わせの…近く、でさ……目の前で…妊婦の人が子ども産まれそうになって……それで、座り込んでさ』
言葉に詰まりながら後ろめたそうに。
良平は事の事情をそう話した。
それを聞いて、古い記憶が蘇ってくる。
前に遅刻の言い訳に使った嘘。
それをすぐに思い出した。
「……あっそ、そりゃ大変だったな?」
反応を待たれているような沈黙の通話に、俺は呆気なくそう放っていた。
冷たく言いつつ、その理由が嘘とは思っていなかった。
良平はくだらない嘘はつくけど、真面目な話で嘘はつかない。
俺はそれをよく知ってる。
だから、たまたま過去との絡みはあるものの、今聞いたことが嘘だとは思えなかった。
俺が許せないのは、亜希を放置したこと。
一番はそこに問題があった。
「亜希はちゃんと送ってくから。じゃあな」
俺はそう言い、一方的に電話を切った。