all Reset 【完全版】
待ち合わせに行けなかったことを亜希に謝ろう。
それに、秀にも謝らないと駄目だ。
そう思った俺は、とりあえず家に戻り、二人が帰ってくるのを待ち伏せようと家を出た。
俺の家から亜希の家に向かう道。
距離的には歩いて二分もかからない近さだけど、謝る台詞を考えると歩む足は重く遅かった。
一軒過ぎ、もう一軒過ぎ、誰も歩いてない夜の住宅街は静かで、たまにどっかで吠える犬の鳴き声と、自分の足音だけが聞こえる。
次の家の角を曲がって二軒目。
亜希の家を目前にして、らしくもなく足が止まった。
どうしようと思いながらその場で行ったり来たりしてみる。
ポタッと前髪の隙間に何かが落ちてきた気がして空を見上げると、また雨が降り始めたようだった。
病院を出たときには上がっていた雨。
休憩を終えた空は、また地上を濡れた世界にしようとしている。
雨に後押しされて、俺は重い足を進めた。
今日はふざけないで、真面目にいこう。
そう思って曲がる角に差し掛かろうってときだった。
閑静な住宅街に響く、楽しそうな高い声が耳に入ってきた。
その慣れ親しんだ声に俺の足は止められた。