all Reset 【完全版】
遠ざかっていく良平先輩の背中を、わたしは見えなくなるまで見つめていた。
ずっと見てきた、大好きな後ろ姿。
見つめるしかできなかった、あの頃を思い出した。
良平先輩に恋した、高校一年のあの日。
わたしはずっと、先輩だけを見てきた。
楽しそうに笑った顔。
真剣なときに見せるりりしい顔。
ふざけたときの、子どもみたいなイタズラ顔。
ふとしたときに見せてくれた、優しい顔。
でも……
最後に見たのは、怒ったような切ない顔だった。
亜希先輩を想って、わたしに見せた顔。
問い詰めても言わなかった、先輩の本当の気持ち。
あんな顔して亜希先輩が好きなんて言われたら、わたしには何も言えないよ。
最後の最後まで悪あがきしてみたけど、本当の最後は何も言えなかった。
わたしが良平先輩を想う気持ちより、良平先輩が亜希先輩を想う気持ちの方がきっと強い。
そう思った。
わたしが良平先輩を知らないときから、先輩は亜希先輩が好きだったんだよね?
それをどっかでわかってて、わたしは良平先輩を諦められなかった。
先輩…
ごめんね……。