all Reset 【完全版】
君が好きだった人
今日は、昼過ぎから一つだけ講義を受けに大学へ行った。
その後バイト先の先輩に呼び出されて、夕方から数時間酒の相手をしていた。
寝不足のせいか酒の回りが早く、人数が集まってきたのをいいことに抜け出すように帰ってきた。
店から外に出ると雨が降っていた。
地面を打ちつけるような強い雨は、冬の空気をより冷たく感じさせた。
相変わらずひっそりとした建物に入ると、鍵を探りながら階段を上がる。
居酒屋からパクってきたビニール傘の雨粒を払いながら、最後の段に足をかけたとき、酒の回った頭が急に冴えた。
どうして……。
目に飛び込んできた光景に足が止まっていた。
「亜希……」
ずぶ濡れでドアの前に座り込んでる姿。
顔を埋めていてもすぐにわかった。
どうして……ここに亜希が?
俺にはそれがわからなかった。
記憶を失う前はここにもよく来ていた。
でもあの事故の後、亜希はここに一度も来ていない。