all Reset 【完全版】
そう言われて、俺はゆっくり目を開く。
吐息ほどの小さなため息が聞こえた。
「俺さ、亜希のことずっと見てきた。お前よりも、ずっと昔から……」
しみじみと、良平は語るようにそう言った。
微かに『お前よりも、ずっと昔から』の部分に強調があったような気がする。
「アイツの良いとことか、悪いとことか、結構知ってるつもりだし。だから……アイツの気持ちも、何となくわかるっていうかさ」
一体、何が言いたいのか?
俺は薄暗い光の中、天井の一点を見ながらそれを考える。
いつの間にか音楽は全曲を流し終わり、頭上にある目覚まし時計の秒針だけがカチカチと時を刻んでいた。
「亜希は、お前のこと好きだよ」
良平はまた唐突にそう言った。
言われた言葉がぐっと心臓を押し付ける。
場の空気を和らげるためか、良平はへへっと笑った。
「何か、わかるんだよな……。っていうか、お前も亜希のどこがいいわけ? ぜっんぜんわかんねーし。ってかさ、お前らじれったいんだよ、いい加減に」
徐々に良平の笑い声は消えていき、部屋の中には淀んだ静けさだけが残った。
一時の間を置き、良平は俺に背を向け立ち上がる。
こっちに振り向いた良平の顔が視界の端に入り込んだ。
「余裕かましてたら、また他に持ってかれっぞ」