all Reset 【完全版】
潤んだ大きな瞳が、真っすぐ俺を見つめる。
気付くと、亜希を押し倒し見下ろしていた。
乾ききらない亜希の髪が、束になってベッドに散らばる。
こんなに近くても、亜希はまだ遠く離れている。
体温を感じることなんかじゃない。
心を感じること。
それが、今はできない。
溜め込んだもどかしさに耐えきれず、見下ろす亜希に唇を重ね合わせていた。
どうしてだか、自分でもわからない。
そんな突然の出来事に、亜希は何の抵抗もしなかった。
意味がわからないのか、驚いてるのか、ピクリとも動かない。
包み込んだ薄い唇が、徐々にひんやりした感覚を伝えてくる。
体温を忘れたみたいな冷たさは、俺のもどかしさを余計に肥大させた。
「ごめん……」
離れる亜希の顔に少しずつ焦点が合っていく。
ピントが合った俺の目に映し出された亜希は、瞬きを忘れて目を見開いていた。
「思い出すの……待ってるから」
そう言った、そんなときだった。
ピンポーン、ピンポンピンポン――
けたたましく部屋の呼び出し鈴が連打で押され始めた。