all Reset 【完全版】
冷たい雨
どこを捜しても見つからない。
家にも帰ってない。
最後の宛は、ここしかなかった。
鳴りきらないうちに次の音に潰され、重なる呼び出し音。
押しすぎ、ってくらいインターフォンを鳴らしまくってる。
秀の部屋に来るのは気が引けた。
まさかのまさかで、最後まで足を運ばなかった場所。
どれだけ捜しても亜希が見つからず、結局来てしまった……。
ここにいなかったら物凄く焦るだろうけど、もしいたとしたら、それはそれでまた違う意味で焦ると思う。
尋乃に言われた言葉にショックを受けた亜希。
それを聞いたときはカッとなって、尋乃に「最低」だなんて言っていた。
でも、よく考えれば最低なのは俺だ。
気もないのに彼女と付き合った。
その気にさせといて、うじうじ別れることもできなかった。
最終的には、今の亜希を理由に別れを告げた。
尋乃にとっては、はっきりしない俺に振り回されただけの結果。
俺が彼女に『最低』なんて言う資格はない。
だから、亜希が傷付いたのだって俺のせいだ。
ドアの内側から、カコッと鍵を開ける音がした。
それとほぼ同時に勢いよくドアが開かれ、だるそうな顔が現れた。
「……うるせーよ」
不機嫌に放たれた一言目で、俺は押し続けてたインターフォンから指を離した。
「……押しすぎだし。一回で気付くから」
「だ、よな? わりぃわりぃ」
切れ長な目に睨まれ、たじたじになる。
「……で? 何だよ?」
頭のてっぺんの毛をくしゃっと掴み上げ、秀は気怠そうに首を傾げる。
何事もないような態度を取られたけど、俺の目はすでに“それ”を捕らえていた。