all Reset 【完全版】
「あ、おいっ」
引き止める秀を無視し、俺は乱暴に靴を脱ぎ捨てた。
主の許可無しにずかずか中に入っていく。
ドキドキというか、ハラハラというか、それらしいものが絶妙に絡んだ妙な気分だった。
やっと見つかった亜希は、部屋の隅で壁に向かって突っ立っていた。
雨に濡れた乾ききらない髪が、俺の罪悪感を煽る。
「亜希……」
声を掛けられ、亜希はやっと俺に顔を見せた。
「良平…くん……どうして」
手の平で口を覆った亜希は、幽霊でも見たような驚いた目をして俺を見ていた。
よりによって何で秀のとこ?
やっぱり秀なわけ?
思いたくもないことが次々と台詞になって頭の中を駆けめぐる。
俺を追って中に入ってきた秀が、真横で思いっきりため息をついた。
居たたまれない空気が漂う。
誰かが何かを言わないと、この重苦しい時間が永遠に続きそうだった。
何か……何か言おう。
その限界がきかけたときだった。