all Reset 【完全版】
外に出ると、雨は強さを増して降り続けていた。
持っていたビニール傘も秀の元に忘れ、雨が容赦なく俺を打ちつける。
追い掛けることを邪魔するかの空を恨みながら、目を凝らして亜希の姿を捜した。
秀の部屋を出て、左右に真っ直ぐ伸びる道路。
誰も歩いていないその道の先に、傘も差さずに走っていく小さな姿を見つけた。
遠くなっていく亜希を目指し、自分の最高レベルの速さで走る。
地面を蹴るたび、水しぶきが跳ね上がった。
あと、少し……。
そのくらいまで接近したとき、気配を感じたように亜希が振り返った。
俺を確認した途端、逃げるように全力で走り出す。
きりがない追い掛けっこを終わらそうと、俺の足も容赦なかった。
「待てって!」
やっとの思いで追いつき、亜希の腕を掴み取る。
「何で逃げるわけ? やっと見つけたのに」
さすがに息が上がっていた。
肺が苦しい。
掴まれたまま、亜希は俺を無視するようにスタスタと歩き続けた。
立ち止まろうとも、顔を見せようともしない。
どうしようもない状態に、俺は掴んだ腕を引っ張った。
「亜希!」
振り向かせた亜希は雨に濡れ、ひどく寒そうな顔をしていた。
「どうして……ついて来るの?」
「どうしてって……当たり前じゃん。心配してんの、わかんない?」
亜希が何を思ってそんなことを言うかがわからなかった。
俺の返事に黙る亜希は、 目を伏せ俯く。
顔にかかる前髪を伝い、ぽたりぽたりと雫が滴っていた。
「……違う、よ」